フレックスタイム制の導入を検討、月間総労働時間を定めれば休憩時間、休日は各人の自由でよいか【平成4年:事例研究より】

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一部の職場にフレックスタイム制を導入することを検討しています。

フレックスタイム制は、1ヵ月の総労働時間(契約労働時間)を定めておき、その時間だけ各日の始業・終業時間を選択して働くわけですから、休憩時間や休日をいつとるか各人の自由にしてよいのでしょうか。

たとえば、休憩時間1時間、休日週1回とし、本人の決定にまかせるわけです。

【東京・H社】

フレックスタイム制適用労働者であっても、休憩、休日、深夜業に関する規定の適用は排除されません。

フレックスタイム制は、「始業と終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる」(労基法第32条の3)制度であり、休憩時間、休日まで労働者の決定にゆだねるものではありません。

フレックスタイムを採用した場合でも、休憩時間は労基法第34条の要件に、休日は労基法第35条の要件に合致するように与えなければなりません。

労基法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないことを規定しています。

さらに、休憩時間の一せい付与の原則、自由利用の原則も定めています。

一せい休憩付与の原則の適用のない業種、つまり運輸交通業(労基法第8条第4号)、卸売・小売業(第8号)、金融保険業(第9号)、映画演劇業(第10号)、電気通信業(第11号)、保健衛生業(第13号)、料理飲食・接客娯楽業(第14号)、官公署(第16号)を除いては、フレックスタイム制を採用しても、休憩時間は一せいに与えなければなりません。

したがって、一せい休憩が必要な事業では、フレックスタイム制を採用した場合でも、法定の長さの休憩時間をコアタイム中に設け、一せいに与えるようにしなければなりません。

一せい休憩の適用が除外されている業種では、休憩時間をとる時間帯を労働者にゆだねることもできます。

その場合には、就業規則に休憩時間の長さを定めるとともに、それをとる時間帯は労働者の決定にゆだねる旨定めておかなければなりません。

フレックスタイム適用労働者に対しても、毎週少なくとも1回(あるいは4週間を通じて4日)の休日を与えなければなりません。

所定休日は、就業規則などで明確に定めておかなければなりません。

1週間の特定の日、たとえば日曜日などを定めておく必要もあります。

フレックスタイム制だからといって、休日をいつにするかは、労働者の決定にゆだねることは許されないのです。

1週1回の休日を与えれば、休日の規定の関係では問題はありませんが、1ヵ月の総労働時間(契約労働時間)の関係で問題があります。

フレックスタイム制を採用した場合でも、1ヵ月の総労働時間は、1ヵ月を平均して1週間の労働時間が法定労働時間の範囲となるように定めなければなりません。

4月から1週間の法定労働時間は44時間(猶予事業は46時間)となりますので、1ヵ月の法定労働時間の総枠は、44時間×1ヵ月の暦日数÷7 となります。

1ヵ月の法定労働時間の総枠の範囲内とするため、1ヵ月の所定労働日×8時間という決め方ですと、所定労働日を定め(休日も定めることになる)、週1回の休日のほかに、休日を設けることになります。

【平成4年:事例研究より】