当社は、毎月の賃金締切日において、各課より提出された勤怠表と年次有給休暇届をチェックして給料計算しています。
欠勤した場合、事後の年休届により年休に振替える事後の振替も認めていますが、年休届の提出忘れが多く、年休処理しなかったことの苦情も受けます。
そこで、年休のある者の欠勤を自動的に年休処理したいのですが、労使協定で可能でしょうか。
【新潟・M社】
労基法第39条は、年次有給休暇(年休)について、使用者は、法定の要件(1年間の継続勤務と1年間の出勤率が8割以上あること)を満たした労働者に対して一定日数の年休を与えなければならないことを規定し、与える時季については、「使用者は、前第3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」としています。
年休は労働者が請求し、使用者は事業の正常な運営を妨げる事由があって時季変更権を行使する場合のほかは、与えなければならないものであって、労働者は年休をとる場合、事前に「何月何日に年休をとる」旨の請求(時季指定)をしなければなりません。
労働者が欠勤しその後に欠勤日を年休に振替えるようなことは本来、法の予期するところではありません。
しかし、事後の振替えも広く行われています。
これは、労働者より欠勤日を年休に振替えてほしいという申出があり、使用者も別段これに異議がなければ、欠勤日を年休に振替えても違法にはならないということにすぎません。
したがって、労働者が当然の権利として後日の年休振替え請求権を有するわけではなく、就業規則の定めや使用者の承認があってはじめて事後の振替えが認められるわけです。
欠勤日を年休に振替える場合について、行政解釈は、 「問 欠勤(病気事故)した場合、その日を労働者の請求により年次有給休暇に振替えることは違法ではないかと思料するが、就業規則その他にその事を定める必要はないか」 「答 当該取扱いが制度として確立している場合には、就業規則に規定することが必要である」(昭23・12・25基収第42旧号、昭63・3・14基発第150号)としています。
事後の振替えは、あくまで労働者の請求が前提となっており、振替えの請求がないのに、使用者が一方的に(勝手に)年休に振替えることはできません。
貴社は事後の年休振替えを認めており、事後の年休届により欠勤日を年休に振替えることは差し支えありません。
ご質問は、あとで年休届の提出を忘れ、年休処理をしなかったことの苦情を受けることもあるため、年休のある人の欠勤を自動的に年休処理できないかということですが、振替請求の意思は必ずしも明示である必要はなく、明確な反対意思がないときは、黙示の振替請求があったとみなしうる場合もあると考えられます。
労基法に定める「労働者の請求する時季に与えなければならない」と調和するものでなければなりませんが、事後の年休届を忘れ(その責任は本人にあるとしても)、年休処理されないことに対する苦情があるとすると、労使協定により欠勤の自動的年休振替えを定め、年休の残日数がある限り欠勤日を自動的に年休として取り扱うことを協定すれば、自動的振替えも可能と考えられます。
労働者の団体意思を反映して決定したものですから、問題ないと思われますが、この場合も異議を述べた場合は年休処理できません。
【平成4年:事例研究より】