労使協定で年休2日分を夏季休暇に計画付与、消化前に退職する者がこの分の年休を請求、認めるべきか【平成4年:事例研究より】

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夏季休暇3日に加え、年次有給休暇2日の計画付与で、8月11日から18日までの連続8日の夏季休暇とします。

労働組合と労使協定を結び実施します。

ところで、7月末で退職する者がいますが、この退職予定者が計画付与2日分の年休を請求してきた場合、これを拒否し、計画付与となっている2日の年休は与えないという扱いでよいでしょうか。

【東京・H社】

労基法第39条第4項は、「使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と規定しています。

これによれば、使用者が時季変更権を行使しない限り、労働者が請求(指定)する時季に与えなければならないわけですが、業務との調和を図りながら、年次有給休暇(年休)を消化できるように、同条第5項により労使協定を条件に計画付与が可能となっています。

同項は、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分にっいては、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」と規定しています。

労使協定により計画付与の対象とできるのは、各人の有する年休日数のうち5日を超える部分です。

5日を超える部分には、前年の繰越し分も含まれます。

計画付与される年休は、労使協定で定めるところによって付与されることとなり、労働者の請求する時季に与えなければならないという労働者の時季指定権に関係なく計画付与ができます。

計画付与に組み入れられた年休は、労働者がその日に年休をとりたくないといっても、労使協定で定めた計画どおり年休を付与すればよいことになります。

したがって、計画付与に組み入れられた部分の年休について、労働者がその行使を申し出ても、それを拒否できます。

しかし、計画付与は、その付与日が労働日であることを前提として行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画付与はできません。

退職後を計画付与日とされたのでは、結局、その年休はとれなくなるからです。

これに関し行政解釈は、

「問 退職予定者が計画的付与前に計画日数分の年休を請求した場合、拒否することができるか。」

「答 計画的付与は、当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできない。たがって、そのような場合には、計画的付与前の年休の請求を拒否できない(昭63・3・14基発第150号)。」としています。

夏季休暇を大型化するため、従来の夏季休暇に加え年休1日を計画付与することにしても、7月末に退職する者から計画付与分の年休の請求があったときは、その請求を拒否することはできません。

請求どおり与えなければなりません。

【平成4年:事例研究より】