フレックス制の休日振替でも割増賃金払うか【平成15年:事例研究より】

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フレックスタイム制を採用して、土、日を休日としています。

土曜休日を他の週の労働日と振り替えた場合、時間外労働が発生し時問外割増賃金の支払いが必要となると聞いたのですが、フレックス制で休日を振り替えた場合も、割増賃金を支払わなければならないのでしょうか。

【神奈川 H社】

フレックスタイム制は、1ヵ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業および終業の時刻を選択して働く制度です。

自分の意思により始業、終業時刻を自由に決定できる勤務ですから、1日の労働時間、1週間の労働時間に長短が生じます。

通常の労働時間制であると1日単位、1週間単位で時間外労働が発生しますが、フレックスタイム制では、各日、各週の労働時間が法定労働時間を超えても時間外労働となりません。

フレックスタイム制の場合には、1日単位、1週単位の労働時間はなく、清算期間の総労働時間のみが定められていますので、フレックスタイム制の時間外労働について、行政解釈は「フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間であること、したがって、法第36条第1項の規定による協定についても、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるものであること」(昭63・1・1基発第1号、平11・3・31基発第168号)としています。

清算期間が1ヵ月であれば、1ヵ月単位でしか時間外労働は発生しないことになります。

フレックスタイム制の場合、時間外労働となるのは「清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間」ですから、清算期間内で土曜休日を他の週に振り替えたとき、ある週の労働時間が長くなるとしても、清算期間の総労働時間は変わりありませんので、清算期間の法定労働時間の総枠を超えない限り時間外労働となりません。

休日を振り替えた場合も、清算期間の終了時に、労働時間が法定労働時間の総枠(契約時間)を超えた時間に時間外割増賃金(125%)を支払うことになります。

1日、1週間単位では時間外労働は発生しませんので、「休日を振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する36協定及び割増賃金の支払が必要であることに注意されたい」(昭22・11・27基発第401号、昭63・3・14基発第150号)という行政解釈は、フレックスタイム制では関係ないことになります。

【平成15年:事例研究より】