高卒者が20歳前に重症を負ったが、働いても得にならないケースか【平成15年:事例研究より】

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高卒で入社したばかりの社員が、私的な事故で重傷を負いました。

障害が残って年金をもらうと仮定して、就労と年金の関係について質問があります。

20歳前の年金受給者を対象に、一定以上の収入がある場合、年金をストップさせる仕組みがあったと記憶します。

彼のようなケースでは、働いても収入面で得にならない可能性はありませんか。

【福岡 O社】

障害等級2級は「労働をして収入を得ることができない」状態を指しますから、2級以上の人について、働きながら年金をもらうという前提条件には疑問符が付きます。

3級の場合には、「労働に著しい制限を受けます」が、就労のチャンスを見出せるように周囲も積極的に援助すべきでしょう。

それはともかく、ご質問にある20歳前の収入制限の話を説明します。

これは「傷病の初診日に20歳未満であった者(同日において被保険者でなかった者に限る)」が障害基礎年金を受ける場合、収入に応じて金額を調整する仕組みです。

金額は被扶養親族の数に応じて異なりますが、扶養親族ナシの場合、収入が360万4,000円を超え462万1,000円以下のときは年金の2分の1を停止、462万1、000円を超えるときは全額停止という扱いになります。

国民年金の場合、第2号被保険者に該当しない限り、「20歳未満であった者」は被保険者ではありません。

常識的にいうと、被保険者でない人は年金等給付を受けられないはずですが、この原則に固執すると、20歳前に重い傷病を患った人は、一生、十分な年金を受けられないという結果を招きます。

それでは酷なので、社会保障政策上の措置として、特例的に年金の受給権を認めたのですが、一定以上の収入がある人まで保護の対象にする必要はないので、年金を段階的にカットする仕組みを適用しています。

お尋ねのケースでは、20歳前といっても厚生年金の被保険者ですから、すでに国民年金の第2号被保険者資格も取得しています。

ですから、障害等級1・2級に該当した場合には、障害基礎年金は20歳以上の被保険者を対象にした通常の規定が適用されます。

つまり、収入に関する制限は、課せられないということです。

一方、厚生年金には、収入の多寡に応じて年金額を調整するような制度は存在しません。

被保険者として、きちんと保険料を納付していたのですから、20歳前の障害基礎年金の特例のように、年金を制限する理由がないからです。

ご質問にある方が障害等級1・2級と認定されたら、障害厚生年金・障害基礎年金の権利が生じますが、厚生年金・基礎年金ともに満額を受け取ることができます。

3級の場合は、障害厚生年金だけですが、もちろん収入制限は掛かりません。

いずれにせよ、就労したからといって年金面でデメリットは発生しないので、就労可能な状態なら会社としても復職に向けた援助を検討すべきです。

【平成15年:事例研究より】