業務に支障あるが、退職日を1ヵ月延ばせないか【平成15年:事例研究より】

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8月26日に従業員Aから9月末日までで退職したいと退職届の提出がありました。

Aは年休25日の未消化分があり、これを取得した後に退職します。

翌日から年休を取得しており、会社に来る日がありません。

これでは業務の引き継ぎもできませんので、退職日を遅らせたいのですが、可能でしょうか。

できれば、10月末日まで1ヵ月遅らせたいのですが…。

【神奈川 Y社】

労基法では、退職の手続きについて規定したものはなく、もっぱら民法によることになります。

民法によれば、期間の定めのない契約はいつでも解約の申入れをすることができ、「雇用契約は、解約の申入れの後2週間を経過することによって終了する」(民法第627条第1項)こととされています。

期間をもって報酬が定められているときは、「解約の申入れは次期以後に対して行うことができるが、その期の前半に行われなければならない」(民法第627条 第2項)こととされています。

たとえば、月給の場合、月の15日までの申入れで翌月の初めから、16日以後なら翌々月の初めから雇用関係を終了させることができることになります。

ご質問の場合、8月26日に解約を申し入れ(退職届の提出)ているのですから、9月末日をもって退職することができます。

したがって、労働者との話合いで、退職日を遅らせることに労働者が同意すればよいのですが、それでも指定日に退職したいということであれば、それに従わざるを得ません。

年次有給休暇は、労働者が請求した時季に与えなければなりませんが、その年休の取得によって事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者に時季変更権が認められています。

つまり「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」(労基法第39条第4項ただし書き)と規定しています。

しかし、時季変更権を行使するには、変更して与える他の日がなければなりません。

解雇予定日が20日後である労働者が20日の年休権を有している場合、労働者の年休請求に対して「当該労働者の解雇予定日を超えての時季変更権は行えない」(昭49・1・11基収第5554号)とした行政解釈があります。

退職予定日を超えて変更することはできませんので、労働者が話合いで退職日の変更に応じればともかく応じない場合には、請求した時季を変更することはできません。

変更する他の日がないと、時季変更権を行使する余地がありませんから、請求どおり年休を与えなければならないことになります。

【平成15年:事例研究より】