入社直後の社員の奥さんが出産、出産育児一時金は国保に請求か【平成15年:事例研究より】

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先日、中途入社したばかりの社員の奥さんが、出産しました。

採用当時に提出した被扶養者関連の届出には妻ありと記載されてありましたが、妊娠の事実は知りませんでした。

妊娠したのは入社はるか以前のことなので、出産育児一時金は、国民健康保険のほうに請求するのでしょうか。

【香川 D社】

健康保険法第114条をみると、「被扶養者が出産したるときは被保険者に対し家族出産育児一時金として政令で定める金額(30万円)を支給する」とあります。

「被保険者の被扶養者が出産した」という要件が課せられているだけで、妊娠の時期等には触れていません。

健康保険の一般被保険者に対する給付は、資格取得が適正である限り、資格取得前に罹患していた疾病等でも対象となります。

家族に関する給付も、被扶養者として届出があった後に発生した費用等については、給付を受けることができます。

日雇特例被保険者の場合には、過去2ヵ月に26日分以上の保険料が納付されていることなど、一定の要件がありますが、一般の被保険者にはそうした条件は付されていません。

被保険者となって、まだ一度も保険料を納めていなくても、各種保険給付の受給権があるのです。

お尋ねのケースでは、入社当時に、奥さんを被扶養者にする手続きは済んでいるようですので、家族出産育児一時金を受け取ることができるはずです。

国民健康保険の場合、出産育児一時金は相対的法定給付で、市区町村に定めがあるときに限り支払い義務が発生しますが、一般に健保同様30万円が支給されています。

しかし、金額が同じだからどちらに請求してもよいわけではなく、既に健保の被保険者資格を取得した後の出産ですから、健保から給付を受けます。

出産の事実が分かっていて、後から健保に加入したので、不正受給のような後ろめたさを感じるかもしれませんが、法律上、何の問題もありません。

【平成15年:事例研究より】