退職時に限って2ヵ月分の控除が可能とあるが、理由は何か【平成16年:事例研究より】

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昨秋、人事課に配属され、保険関係を担当しています。

健康保険の条文を勉強していて、疑問が生じました。

「被保険者がその事業に使用されなくなったときに限り、報酬支払いの際において前月分と当月分の保険料を控除することができる」という規定がありますが、こんな面倒なただし書きがどうして必要なのでしょうか。

【千葉・D社】

健康保険料控除に関する原則は、「被保険者の負担すべき前月分の保険料を、その報酬(当月分の賃金)から控除することができる]というものです。

月末に被保険者資格を取得しても、その月の保険料は日割りでなく丸々1月分払う必要がありますが、保険料を控除できるのは、翌月の給料からになります。

以下、ずっと1月遅れの徴収という状態が続きます。

しかし、会社が保険料を納付する期限は、「翌月末日」ですから、会社として困ることはありません。

資格喪失した月は、保険料を納める必要はありません。

ですから、普通は、退職する最後の月には、退職1月前の保険料を納めることになります。

しかし、月末退職の場合だけは、例外です。

資格喪失日は、原則として退職日の翌日です。

このため、月末に退職した人の資格喪失日は、翌月の1日になります。

11月30日に退職した人は、資格喪失日が12月1日になります。

この場合、資格喪失の前月、つまり11月分までの保険料を納付する義務が生じるのです。

しかし、月末に退職した人に、12月の賃金は支払われません。

普通は、退職時に賃金をきちんと清算してしまうものです。

12月分から11月分の保険料を控除しようとしても、それは無理という話になります。

こういう不都合があるため、わざわざ退職時に限っては、前月・当月と2ヵ月分の保険料を控除できるという規定を置いたのです。

月末以外の日に退職した人にとって、この規定は何の意味もありません。

【平成16年:事例研究より】