年休者が緊急出勤したが割増を払って処理すべきか【平成15年:事例研究より】

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当日は年次有給休暇をとって休んでいたのですが、緊急の必要により呼び出しをかけ、午後1時30分に出勤し、終業時刻である午後5時30分まで勤務しました。

この場合、当日は年休で休んでいたわけですから、勤務した4時間に対し、法定外休日の休日出勤手当(1 2 5%)を支払うべきでしょうか。

【兵庫 K社】

年次有給休暇は、賃金の減収を伴うことなく労働義務の免除を受けるものですから、年休が与えられる日は労働日でなければなりません。

休日その他労働義務が課せられていない日については、年休を行使する余地がありません。

年休をとって休めば、就労しない点では休日と同じかもしれませんが、労働義務を負う日について個別的に労働義務の免除を受けるもので、その日は労働日で休日ではありません。

年休をとった日は労働義務がないのですから、使用者の都合によって呼び出すことは原則としてできないものです。

緊急やむを得ない事情があり、労働者の同意のもとに事実上労働者が出勤した場合は、当日は年休を与えたことになりませんから、別の日に年休を与えなければなりません。

年休は「1労働日」単位で付与されるもので、1労働日とは原則として暦日計算によるべきものとされ、午前0時から午後12時までの24時間をもって1労働日の年休となります。

出勤した時間が1日のうち一部であっても、その日は年休を与えたことにならず、別に1日の年休を与える必要があります。

年休をとっていた日に、緊急呼び出しに応じて午後1時30分から午後5時30分まで勤務したとしても、通常の労働日に勤務しただけですから、その4時間に対して法定休日以外の休日出勤として休日出勤手当(125%)を支払う必要はありません。

また、時間外労働として割増賃金( 125%)を支払わなければならないのは、1日8時間、1週40時間を超えて労働させた場合ですから、実労働時間が1日8時間を超えない限り、割増賃金の支払の問題は生じません。

呼び出しに応じて勤務した当日の途中までの休みは、労基法第26条に規定する「使用者の責に帰すべき事由による休業」となります。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。

1労働日の一部を休業した場合は、労働した時間の割合で既に賃金が支払われていても、その日につき全体として平均賃金の100分の60までは支払わなければなりません。

したがって、実際に労働した時間に支払われる賃金が平均賃金の100分の60に達しない場合には、その差額を支払わなければなりません。

法的な解釈としては以上のようにいえても、緊急時に呼び出しに応じて出勤したわけですから、その日は通常の勤務をしたものとみなして、別に1日の年休を与えるようにすべきでしょう。

【平成15年:事例研究より】