計画付与で新入社員への年休前貸しは可能か【平成15年:事例研究より】

トップ » 就業規則 » 就業規則の必要性と作り方(雛形)

当社では土・日の休日4日を含めて連続9日間の夏季休暇を検討しています。

5労働日のうち、3日は以前からの夏季休暇、残りの2日は年休の計画的取得により実施したい考えです。

年休の計画的付与は初めてです。

年休のない4月1日入社の新入社員の扱いですが、6ヵ月後の10月1日に発生する10日のうち、2日を前貸しすることは可能でしょうか。

【広島 H社】

年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えなければなりませんが、労使協定により年休を与える時季に関する定めをしたときは、その定めるところにより計画的付与が可能とされています(労基法第39条第5項)。

労使協定により計画的付与の対象にできるのは、各人の有する年休日数のうち5日を超える部分です。

少なくとも5日は、労働者の病気その他の個人的事由による取得のために、労働者が請求した時季に与えるものとして留保しておかなければなりません。

事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な付与日を労使協定します。

全社ぐるみの一斉付与の場合、年休のない人には計画的付与と同日数の年休を付与するか、特別休暇として処理し、賃金面で不利益を伴わないような措置を講ずる必要があります。

ご質問では、年休のない新入社員には、継続勤務6ヵ月後の10月1日に発生する年休を前貸しできないかということですが、問題があります。

10月1日に発生する2日を前貸しし、2日減じることは、法定の日数の年休が与えられないことになり、問題となる余地があります。

2日の年休を前貸ししても、それは法を上回って与えられる年休で、10月1日に発生する年休とは別のもので、10月1日には法定日数の年休10日を与えなければならないと考えるべきです。

また、法定の年休10日のうち2日を分割付与したとしますと、5日を超える部分がなく、計画的付与の対象となる年休がないことから、計画的付与はできないことになります。

行政解釈は、「年次有給休暇の日数が足りない、あるいはない労働者を含めて年次有給休暇を計画的に付与する場合には、付与日数を増やす等の措置が必要なものであること」(昭63・1・1基発第1号)としています。

土・日の休日4日を含め、連続9日の夏季休暇という制度の趣旨を十分に考慮し、年休のない新入社員については、会社の負担において有給の特別休暇とすべきでしょう。

【平成15年:事例研究より】