業務上のケガで一時金受け取ると障害手当金も権利発生か【平成15年:事例研究より】

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従業員が、業務上のヶがで障害等級9級に認定されました。

この場合、同時に厚生年金から障害手当金も受給できるのでしょうか。

以前、労災で退職された方は、労災保険と厚生年金の両方から年金をもらっていると聞きます。

【山口 Y社】

労災保険と厚生年金保険(国民年金)の併給調整は、年金と一時金で、扱いが異なります。

年金は厚生年金(国民年金)優先、一時金は労災保険優先です。

年金の場合、障害厚生年金と障害基礎年金は満額支給され、労災年金が減額されます。

厚生年金・基礎年金両方の受給権がある場合、労災保険は本来の額に0.73を乗じた額に減額されます。

労災保険は、業務上の事由に基づく補償ですから、事業主の責任で、手厚い給付内容となっています。

それでも、労災保険100%の額と、労災保険73%に障害厚生年金・基礎年金を加えた額とを比較すると、通常は後者のほうが高くなります。

労災の被災者で、同時に厚生年金等の被保険者だった人は、それだけ優遇されるというわけです。

貴社を退職された方は、労務不能が原因なのでしょうから、障害等級2級以上の重い障害だったのではないでしょうか。

その場合、障害厚生年金・基礎年金に加え労災保険の障害補償年金(73%に減額)ももらっているはずです。

一方、一時金の場合はどうかといいますと、障害手当金に関する規定(厚生年金保険法第56条)は、次のようになっています。

「各号のいずれかに該当する者には、障害手当金を支給しない。

一(略) 二(略) 三 当該傷病について国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法、労働基準法第77条の規定による障害補償、労災保険法の規定による障害補償給付若しくは障害給付(略)を受ける権利を有する者」 ですから。

労災保険の障害等級9級に該当し、一時金の障害補償給付をもらった人は、重ねて厚生年金から障害手当金を受け取ることはできません。

【平成15年:事例研究より】