外部機関に委託して実施する研修に行く途中は通災か【平成15年:事例研究より】

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私の会社にはプレス作業があり、作業者には特別教育を実施する必要があります。

しかし、社内では十分な教育ができないので外部で教育を受けさせようと思っています。

その場合に教育先に行く途中で事故が発生した場合には、通勤災害として保険給付の対象になるものでしょうか。

教育は他にも社外に行かせて受けさせるものがありますが、一般的に通勤災害の扱いはどうなるでしょうか。

【群馬 F社】

ご質問によりますと、通勤災害に該当するかどうかが問題になっているようです。

ご承知のように、労災保険で保険給付の対象となる「通勤」は、労災保険法第7条第2項の規定によりますと、労働者が、就業に関し、住居と「就業の場所」との間を、合理的な経路及び方法により往復することであるとしています。

そこで、まず問題になることは、特別教育を受けに行く他社が、この「就業の場所」に該当するか否かです。

では、就業の場所とはどのような場所をいうかといいますと、旧労働省の通達には「業務を開始し、又は終了する場所をいう」(昭48・11・22 基発第644号)とあります。

結局のところ社外で受ける特別教育が、労働者にとって「業務」といえるかどうかということが問題になってきます。

そうなりますと、その特別教育そのものの性格をつかむことが必要となります。

そのためには、安全衛生教育の実施について規定している労働安全衛生法をみなければなりません。

そこで同法第59条をみますと、その第3項は「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならない」と規定しており、これには6月以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則規定も設けられています(第119条第1号)。

そして、特別教育を実施しなければならない業務については、厚生労働省令である労働安全衛生規則第36条に具体的に列挙されています。

その条文をみますと、第2号に「動力により駆動されるプレス機械の金型の安全装置若しくは安全囲いの取付け、取外し又は調整の業務」とあります。

したがって、以上の業務に従事する労働者に対しては、事業者が、厚生労働省告示である安全衛生特別教育規定第3条にあるとおり、4科目合計8時間以上の学科と、2時間以上の実技教育を行う義務があることになります。

以上でお分かりいただけますように、事業者(会社)には特別教育を実施する義務があり、それを受けることは労働者にとっては「業務」に該当することになります。

したがって、その特別教育を受ける場所は、それを受ける労働者にとっては、当然のこととして労災保険法第7条第2項に規定する「就業の場所」に該当するということです。

保険給付は? そうなりますと、ご質問にあります教育先の他社に行く途中で発生した災害は「通勤災害」として労災保険給付を受けることができるかということですが、そう簡単にもいきません。

といいますのは通勤災害でなく「業務災害」に該当する場合もあるからです。

すなわち、あなたの会社から「出張」ということで教育を受けに行く場合には、一般的には出張期間中は事業主の支配下にあるものとして、その間に発生した災害は「業務災害」として取り扱われることになるからです。

もし、会社でなく、直接労働者の自宅から教育先の会社まで、通常の「通勤」のように往復することになりますと、その途中で発生した災害は一般的には「通勤災害」として取り扱われることになります。

【平成15年:事例研究より】