フレックスタイム制を導入、契約労働時間を超えても法定内であれば通常賃金だけでよいか【平成4年:事例研究より】

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当社は、従業員170人ほどの中小企業です が、4月ごろからフレックスタイム制を一部の職場へ導入することが決まりま した。

清算期間において1ヵ月の契約労働時間を超えて労働した場 合、法定労働時間の総枠の範囲内であれば、割増賃金(125%)を支払う必要 はないと思いますが、通常の賃金(100%)を支払うようにしたらという話が あります。

割増賃金を支払うか、通常の賃金を支払うかは労使で決め ることで、法の定めはありませんか。

【静岡・M工業】

フレックスタイム制を採用するために は、まず就業規則その他これに準ずるものにより始業及び終業の時刻を労働 者の決定にゆだねることを規定する必要があります。

これにより労働 者が始業及び終業の時刻を自主的に決定できる契約上の権利をもつことにな ります。

次に、労使協定により、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間中の 総労働時間、標準となる1日の労働時間のほか、コアタイム、フレキシブルタ イムを設ける場合にはその開始と終了の時刻を協定することが必要です。

就業規則、労使協定で所定の事項を定めた場合には、清算期間を平均して1週 間の労働時間が週の法定労働時間を超えない範囲で、1日または週の法定労働 時間を超えて労働させることができます。

フレックスタイム制を採用した場合には、時間外労働の判断は、1日、1週間 ではなく、清算期間を単位として行うことになり、清算期間における法定労 働時間の総枠を超えた時間が時間外労働となります。

清算期間におい て1ヵ月の契約労働時間を超えて労働した場合でも、法定労働時間の総枠の範 囲内であれば、時間外労働とはならず、割増賃金(125%)を支払う法的な義 務はありません。

契約労働時間(所定労働時間)を超え、法定労働時間の総枠に至るまでの時 間については、原則として通常の労働時間の賃金(100%)を支払うことで足 ります。

ただし、契約労働時間を超えたとき、割増賃金を支払う旨を 定めた場合には割増賃金を支払わなければなりません。

これは、通常の労働時間制のもとで、たとえば1日の所定労働時間が7時間の 事業場で8時間労働させた場合の1時間と同じ考え方です。

いわゆる法 内残業に当たるわけですから、法の定めはなく、どのような賃金(割増賃金 か通常の賃金か)を支払うかは、労使協定などで決めればよいことです。

【平成4年:事例研究より】