雇入時診断項目から色覚検査が外されたが全面禁止か【平成15年:事例研究より】

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雇人時健康診断における色覚検査が廃止されたと聞きましたが、その趣旨を教えてください。

今回の改正は、職場において色覚検査を行うことを禁止するものなのでしょうか。

【神奈川 O社】

労働安全衛生法に基づく雇入時健康診断は、雇い入れた労働者の適正配置や入職後の健康管理の基礎資料を得ることを目的として事業者に対して実施を義務づけており、色覚検査も、この一環として全労働者を対象として実施してきました。

しかし、色覚異常についての知見の蓄積により、色覚検査において異常と判別される方であっても、大半は支障なく業務を行うことが可能であることが明らかとなっていること、事業場において「色」のみではなく文字や形の違い等を用いた表示方法が徐々に普及してきていること、さらに色覚検査において異常と判別される方が業務に特別の支障がない場合にも、事業者が採用を制限する事例もみられること、などから、労働安全衛生法に基づく雇入時健康診断項目としての色覚検査が廃止されました。

本改正は、平成13年10月1日より施行されています。

しかし、各事業場の業務に関連して色覚検査が必要となる場合について本検査の実施を禁止する趣旨ではありません。

しかし、色覚検査を実施する場合には、業務との関連性が認められるとともに、当該労働者に十分な説明を行ったうえ、その同意に基づき実施する必要があります。

さらに、色覚検査は現場における職務遂行能力を直接的に反映するものではないことに十分な注意が必要です。

特に、広く一般的に行われている仮性同色表(石原式など)による色覚検査は、非常に敏感な検査であり、この検査で異常と判別された場合においても、日常生活や職業生活における支障が全くない場合が多いのです。

このため、色覚検査が必要と考えられる場合には、当該作業で用いられる色の判別の方々においては、色覚異常について正しく理解され、不必要な検査を行わないよう注意していただきたいと思います。

また、今回の改正に併せ、労働安全衛生関係法令における「色」を活用した安全確保のための識別措置について、色覚検査で異常と判別される方においても識別が容易となるよう、所要の改正が行われました。

労働安全衛生関係法令における「色」を活用した安全確保のための識別措置としては、化学設備のバルブ・コックや鋼管の色分け、有機溶剤等の区分の色分け等の規定があります。

これらの規定について、色分けのみではなく、文字媒体との併用等の色分け以外の措置も合わせて行うことになりました。

さらに、各事業場内において、「色」表示のみにより、労働者の安全への配慮などの表示が行われている場合においても、上記の措置同様、色のみではなく、文字等の併用や異なった形や大小の差による区別を行う等の配慮が行われることが望まれますごこれらの配慮は、色覚検査で異常と判別される方のみではなく、誰にとっても分かりやすい表示方法のための工夫となるものです。

今回の改正を契機に、事業場内の表示や標識を見直し、誰にとっても働きやすく、安全な職場となるような配慮が自主的になされることが期待されます。

【平成15年:事例研究より】