騒音職場の聴力検査は通常業務の健診内容で足りるか【平成15年:事例研究より】

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法定の健康診断項目においては、聴力検査は1,000ヘルツと4,000ヘルツについて実施義務が課せられていますが、騒音職場で勤務している労働者についても同様な聴力検査でよいのでしょうか。

【兵庫 H社】

法律で定めた健康診断で、聴力検査が項目にあるものには、労働安全衛生法第66条に基づく、雇入時の健康診断および1年以内に1度行う定期健康診断があります。

それらの健康診断では、聴力検査として1,000ヘルツおよび4,000ヘルツの音に係る聴力検査の実施が義務付けられています。

一方、騒音職場に勤務する労働者に対しては、労働安全衛生法令に基づく措置を含め騒音障害防止対策を講ずることにより、騒音障害を防止することを目的とした「騒音障害防止のためのガイドライン」が策定されており、その中で騒音障害の早期発見等を目的とする特別の健康診断を実施することを示しています。

このガイドラインにおいては、騒音作業60種類を列挙し、当該作業場を有する事業者は、このガイドラインに基づき適切な措置を講ずることにより、騒音レベルの低減化等に努めるものとしています。

この中では、当該労働者に対する健康管理の措置として、以下のような健康診断項目を示しています。

雇入時等健康診断 事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際または当該業務への配置換えの際に、次の項目について、医師により健康診断を行うこと。

①既往歴の調査 ②業務歴の調査 ③自覚症状および他覚症状の有無の検査 ④オージオメーターによる250、500、1、000、2、000、4、000、8、000ヘルツにおける聴力の検査 ⑤その他医師が必要と認める検査 定期健康診断 事業者は、騒音作業に常時従事する労働者に対し、6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

①既往歴の調査 ②業務歴の調査 ③自覚症状および他覚症状の有無の検査 ④オージオメーターによる1、000、4、000ヘルツにおける選別聴力検査 ⑤事業者は上記の健康診断の結果、医師が必要と認める者については、次の項目について、医師による健康診断を行うこと。

(ア)オージオメーターによる250、500、1、000、2、000、4、000、8、000ヘルツにおける聴力の検査 (イ)その他医師が必要と認める検査 また、健康診断実施後の措置として、 ・前駆期の症状が認められる者および軽度の聴力低下が認められる者に対しては、屋内作業場にあっては第U管理区分(A測定平均値85デシベル(A)以上90デシベル(A)未満、B測定85デシベル(A)以上90デシベル(A)未満)に区分された場所、屋内作業場以外の作業場においても防音保護具の使用を励行させるほか、必要な措置を講ずること。

・中等度以上の聴力低下が認められ、聴力低下が進行するおそれがある者に対しては、防音保護具使用の励行のほか、騒音作業に従事する時間の短縮等必要な措置を講ずること。

さらに、健康診断結果については、その記録を5年間保存すること、定期健康診断については実施後遅滞なく、その結果を所轄労働基準監督署長に報告すること、としています。

騒音は、人に不快感を与える他、会話や連絡合図などを妨害し、安全作業の妨げになることも多く、生理機能に影響し、騒音性難聴の原因となります。

騒音性難聴には、一時的に聴力が低下する場合と永久的に聴力が低下する場合とがあります。

騒音性難聴は、特に永久損失は現段階では治療方法がないので、①音圧レベルを低くすること、②騒音ばく露時間を短くすること、③周波数を低くすること等により適切な防止対策を講じる等、健康管理のみならず、作業環境管理、作業管理の観点からの対策も重要です。

【平成15年:事例研究より】